「いい一日は音楽からはじまる」をテーマに選曲したボサノヴァのコンピレーション・アルバム。パッケージ・デザインは、若手イラストレーター、笠岡淳一による描きおろしのイラストとなっている。 (C)RS

収録されている曲はボサノヴァを代表するナンバーばかり。演奏者も有名どころがずらりとそろっている。まあ、ボサノヴァのコンピレーションはすべてこんなもの…と思ったのは大間違い。本盤は、この手の名曲集の王道を行きながら、わたしたちがボサノヴァについて抱きがちな既成概念――軽さ、クールさ、そこはかとない抒情――を揺り動かす。すると、そこにはこのジャンルが持つ、もっといなたい魅力が現れてくるのだ。その一例がシルヴィア・テリスの「ワン・ノート・サンバ」。語尾の切り方、息の抜き方に微妙なニュアンスがあり、歌い手の体温を感じる。ドリヴァル・カイミ、ルーシオ・アルヴィス、ディック・ファルネイといった渋い男性歌手たちの出番が多いことも特徴だ。そして、アルバムの最後を飾る「ブラジルの水彩画」。ジョアン・ジルベルト、カエターノ・ヴェローゾ、ジルベルト・ジルのスーパースター3人が顔をそろえた名演は、スケール雄大にしてこれ以上ないほどの美しさだ。(松本泰樹)

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